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2022/02/01
住宅ローンの繰り上げ返済は得なのか損なのか?損をしないための正しい使い方
住まい選びのコツ!
住宅ローンの繰り上げ返済は得なのか損なのか?損をしないための正しい使い方
多くの住宅ローンには、毎月の支払いやボーナス払いとは別に「繰り上げ返済」という仕組みが採用されています。
繰り上げ返済を利用するとトータルの返済額を抑えられることから、返済期間を短くしたり毎月の返済額が抑えられたりといったメリットを享受できる点が魅力です。
今回は、このメリットを最大化するために、繰り上げ返済の活用のポイントや注意点についてお伝えしましょう。
繰り上げ返済とは?その種類は大きく2種類ある
繰り上げ返済とは、まとまった自己資金を元金の返済に充てられる仕組みのことです。
繰り上げ返済をして元金が減れば、将来支払う予定であった利息も減らせます。これにより、返済期間の短縮や返済額の低減を実現でき、家計の負担を軽減できるのです。
一般的に繰り上げ返済には、返済期間を短くできる「返済期間短縮型」と、返済額を抑える「返済額軽減型」に分けられます。
どちらを選ぶかでトータルの返済額も異なってきますから、それぞれの特徴を理解した上で選択することが大切です。
返済期間短縮型
毎月の返済額はそのままで、繰り上げ返済で抑えられた残債分だけ返済期間を短くできるのが、返済期間短縮型です。
たとえば、定年後も住宅ローンの支払いが続く予定の方なら、繰り上げ返済を実行することで定年前に完済でき、老後の生活にゆとりが生まれるでしょう。
また、利息の軽減効果は返済額軽減型よりも大きいといわれますから、金利負担を少しでも抑えたい方にも適した方法です。
返済額軽減型
返済期間は変わらず、毎月のローン返済額を抑えられるのが、返済額軽減型です。
繰り上げ返済をすると、翌月からのローン返済額を改めて計算し直せますから、効果を感じやすいのが返済額軽減型の魅力の一つ。
子どもの教育費が増えることを見越して利用する方や、転職などで収入が減る見込みの方などが利用する傾向が多いようです。
また、金利上昇リスクを懸念されている方の場合、返済額軽減型の繰り上げ返済を利用して毎月の支払額を抑え、金利が上昇しても支払額の上昇を抑えられるといった活用法をされる方もいらっしゃいます。
繰り上げ返済でトータルの返済額はどれだけ変わるのか?
繰り上げ返済を実行することで、トータルの返済額はどれくらい抑えられるのでしょうか。
ここで、返済期間短縮型と返済額軽減型の繰り上げ返済をシミュレーションしてみましょう。
シミュレーションに当たり、ここでは3,000万円を借り入れた方がローン実行から10年後に1回だけ、100万円を繰り上げ返済するケースでシミュレーションします。
前提条件の詳細は、次の通りです。
<シミュレーションの条件>
・3,000万円を借り入れた方が、100万円を返済するケース
<繰り上げ返済のタイミング>
・ローン実行から10年後に1回
<借入条件>
・借入金額:3,000万円
・返済期間:35年(残り25年)
・金利:1.4%(全期間固定金利)
・ボーナス払い:なし
これらの条件で、返済期間短縮型と返済額軽減型の繰り上げ返済を実行したときの効果は、次の通りです。
●利息軽減額
返済期間短縮型:40万5,117円
返済額軽減型:18万5,144円
●返済期間
返済期間短縮型:23年9ヵ月(1年3ヵ月の短縮)
返済額軽減型:25年
●毎月のローン返済額
返済期間短縮型:9万392円
返済額軽減型:8万6,429円(3,963円の削減)
100万円の繰り上げ返済で、返済期間短縮型だと約40万円、返済額軽減型では約18万円もトータル返済額を抑えられることがわかります。これにより、返済期間短縮型では返済期間を1年3ヵ月短縮、返済額軽減型では毎月の返済額が約4,000円抑えられることになります。
ここで注目したいのが、返済期間短縮型のほうが利息軽減額は大きくなるという点。住宅ローンのトータル返済額は、返済期間が長いほど多くなる傾向があります。つまり、期間が短くなる返済期間短縮型のほうが金利負担を抑えやすいのです。
とはいえ、家計の状況は人それぞれですから、どちらのタイプで繰り上げ返済するかは、その時々の状況に応じて選ぶことが重要です。
※シミュレーション参考:金融広報中央委員会「繰り上げ返済シミュレーション」にて算出
https://www.shiruporuto.jp/public/aboutus/container/sikin/menu/s_kuriage.html
繰り上げ返済は早くした方が得?
繰り上げ返済の効果を大きくするには、「どのタイミングで実行するか」という時期も深い関係があります。一般的には、ローンが実行されてからできるだけ早い段階で返済した方が、トータルの返済額を抑えられるといわれますが、果たして削減効果はどれくらい違うのでしょうか。
ここで再び、削減効果についてシミュレーションしてみます。借入条件や返済額は先ほどと同じで、繰り上げ返済の時期を「5年後」「10年後」「20年後」の3パターンで比較してみましょう。
<シミュレーションの条件>
・3,000万円を借り入れた方が、100万円を返済するケース
<繰り上げ返済のタイミング>
・ローン実行から5年後、10年後、20年後のいずれか1回
<借入条件>
・借入金額:3,000万円
・返済期間:35年(残り25年)
・金利:1.4%(全期間固定金利)
・ボーナス払い:なし
これらの条件で、返済期間短縮型と返済額軽減型それぞれの軽減効果をシミュレーションすると、以下の通りになります。
ご覧の通り、ローン実行から早いタイミングで繰り上げ返済を実行した方が、ともにトータルの返済額を抑える効果が大きいという結果になりました。
ローン残高が多いほど、その分の利息支払額も多くなります。早い段階で繰り上げ返済を実行し、ローン残高を減らすことで利息支払額も抑えられ、トータルの返済額を減らせるのです。
※シミュレーション参考:金融広報中央委員会「繰り上げ返済シミュレーション」にて算出
https://www.shiruporuto.jp/public/aboutus/container/sikin/menu/s_kuriage.html
繰り上げ返済をすると住宅ローン控除に影響がある?
ローン実行から早いタイミングで繰り上げ返済を行うことにより、トータルの返済額を抑えられることがわかりました。
その一方で、早い段階で繰り上げ返済をすると、「住宅ローン控除による節税効果が小さくなる」という点も認識しておく必要があるでしょう。
住宅ローン控除は、年末のローン残高の1%を所得税などから控除できるという仕組みですから、繰り上げ返済をするとローン残高が減ってしまい、控除額も減ることになります。
住宅ローン控除は、ローン実行から10年(2022年12月末までに入居する場合は13年に延長)続きますから、「住宅ローン控除が終わってから繰り上げ返済をした方が得」と考える方もいらっしゃるようです。
ただし、住宅ローン控除はローン残高や金利、納税額などによって、効果は人それぞれ。得になるか損になるかは、一概にはいえません。
たとえば、住宅ローンの残高が多い人であれば、少額の繰り上げ返済を実行したところで住宅ローン控除の額にはあまり影響しないでしょう。
また、金利が高い時期なら、1%の住宅ローン控除を得るより繰り上げ返済をした方が、トータルでは得になることもあります。
しかし、ローン残高がそれほど多くない人や低金利が続く現状では、住宅ローン控除による節税効果のほうが大きいこともあります。
いずれにしても、どちらが得になるかは個々にシミュレーションしなければわかりません。詳しく知りたい方は、金融機関の担当者やファイナンシャルプランナーなどに相談してみることをおすすめします。
繰り上げ返済の注意点
住宅ローン控除のほかにも、繰り上げ返済を利用する前に確認しておきたいポイントがいくつかあります。
場合によっては、繰り上げ返済をすることで不利益になる可能性もありますから、これから紹介する点はしっかりおさえておきましょう。
たとえば、手数料。繰り上げ返済の実行にかかる手数料は、多くの金融機関では無料です。
ただし、一部の金融機関では1回あたり数千円から数万円の手数料を求められるところもあります。
手数料の高い金融機関を選ぶと、繰り上げ返済による利息軽減額より手数料の方が多くなることもありますから、こまめに利用する予定の方は手数料のかからない金融機関を選ぶようにしましょう。
また、一度に返済できる金額も金融機関や商品によって異なります。
多くの銀行では繰り上げ返済の額に下限を設けていませんが、ネットバンクなどでは最低10万円から、住宅金融支援機構が提供するフラット35だと100万円以上からといった最低条件額を設定しているところもあります。
こまめに利用する予定の方は、一度に返済できる最低条件額もチェックしておきたいところです。
まとめ
繰り上げ返済は、家計に余裕があるときに実行するものです。
利息額の支払いを抑えたいからと無理に実行したことで、手元資金が少なくなって生活が苦しくなるようでは、元も子もありません。
あくまでも、将来の家計にゆとりを与えることが繰り上げ返済の目的ですから、家計の状況を見定めつつ、長い目線で計画的に実行していくことが、繰り上げ返済の賢い利用法といえるでしょう。
多くの住宅ローンには、毎月の支払いやボーナス払いとは別に「繰り上げ返済」という仕組みが採用されています。
繰り上げ返済を利用するとトータルの返済額を抑えられることから、返済期間を短くしたり毎月の返済額が抑えられたりといったメリットを享受できる点が魅力です。
今回は、このメリットを最大化するために、繰り上げ返済の活用のポイントや注意点についてお伝えしましょう。
繰り上げ返済とは?その種類は大きく2種類ある
繰り上げ返済とは、まとまった自己資金を元金の返済に充てられる仕組みのことです。
繰り上げ返済をして元金が減れば、将来支払う予定であった利息も減らせます。これにより、返済期間の短縮や返済額の低減を実現でき、家計の負担を軽減できるのです。
一般的に繰り上げ返済には、返済期間を短くできる「返済期間短縮型」と、返済額を抑える「返済額軽減型」に分けられます。
どちらを選ぶかでトータルの返済額も異なってきますから、それぞれの特徴を理解した上で選択することが大切です。
返済期間短縮型
毎月の返済額はそのままで、繰り上げ返済で抑えられた残債分だけ返済期間を短くできるのが、返済期間短縮型です。
たとえば、定年後も住宅ローンの支払いが続く予定の方なら、繰り上げ返済を実行することで定年前に完済でき、老後の生活にゆとりが生まれるでしょう。
また、利息の軽減効果は返済額軽減型よりも大きいといわれますから、金利負担を少しでも抑えたい方にも適した方法です。
返済額軽減型
返済期間は変わらず、毎月のローン返済額を抑えられるのが、返済額軽減型です。
繰り上げ返済をすると、翌月からのローン返済額を改めて計算し直せますから、効果を感じやすいのが返済額軽減型の魅力の一つ。
子どもの教育費が増えることを見越して利用する方や、転職などで収入が減る見込みの方などが利用する傾向が多いようです。
また、金利上昇リスクを懸念されている方の場合、返済額軽減型の繰り上げ返済を利用して毎月の支払額を抑え、金利が上昇しても支払額の上昇を抑えられるといった活用法をされる方もいらっしゃいます。
繰り上げ返済でトータルの返済額はどれだけ変わるのか?
繰り上げ返済を実行することで、トータルの返済額はどれくらい抑えられるのでしょうか。
ここで、返済期間短縮型と返済額軽減型の繰り上げ返済をシミュレーションしてみましょう。
シミュレーションに当たり、ここでは3,000万円を借り入れた方がローン実行から10年後に1回だけ、100万円を繰り上げ返済するケースでシミュレーションします。
前提条件の詳細は、次の通りです。
<シミュレーションの条件>
・3,000万円を借り入れた方が、100万円を返済するケース
<繰り上げ返済のタイミング>
・ローン実行から10年後に1回
<借入条件>
・借入金額:3,000万円
・返済期間:35年(残り25年)
・金利:1.4%(全期間固定金利)
・ボーナス払い:なし
これらの条件で、返済期間短縮型と返済額軽減型の繰り上げ返済を実行したときの効果は、次の通りです。
●利息軽減額
返済期間短縮型:40万5,117円
返済額軽減型:18万5,144円
●返済期間
返済期間短縮型:23年9ヵ月(1年3ヵ月の短縮)
返済額軽減型:25年
●毎月のローン返済額
返済期間短縮型:9万392円
返済額軽減型:8万6,429円(3,963円の削減)
100万円の繰り上げ返済で、返済期間短縮型だと約40万円、返済額軽減型では約18万円もトータル返済額を抑えられることがわかります。これにより、返済期間短縮型では返済期間を1年3ヵ月短縮、返済額軽減型では毎月の返済額が約4,000円抑えられることになります。
ここで注目したいのが、返済期間短縮型のほうが利息軽減額は大きくなるという点。住宅ローンのトータル返済額は、返済期間が長いほど多くなる傾向があります。つまり、期間が短くなる返済期間短縮型のほうが金利負担を抑えやすいのです。
とはいえ、家計の状況は人それぞれですから、どちらのタイプで繰り上げ返済するかは、その時々の状況に応じて選ぶことが重要です。
※シミュレーション参考:金融広報中央委員会「繰り上げ返済シミュレーション」にて算出
https://www.shiruporuto.jp/public/aboutus/container/sikin/menu/s_kuriage.html
繰り上げ返済は早くした方が得?
繰り上げ返済の効果を大きくするには、「どのタイミングで実行するか」という時期も深い関係があります。一般的には、ローンが実行されてからできるだけ早い段階で返済した方が、トータルの返済額を抑えられるといわれますが、果たして削減効果はどれくらい違うのでしょうか。
ここで再び、削減効果についてシミュレーションしてみます。借入条件や返済額は先ほどと同じで、繰り上げ返済の時期を「5年後」「10年後」「20年後」の3パターンで比較してみましょう。
<シミュレーションの条件>
・3,000万円を借り入れた方が、100万円を返済するケース
<繰り上げ返済のタイミング>
・ローン実行から5年後、10年後、20年後のいずれか1回
<借入条件>
・借入金額:3,000万円
・返済期間:35年(残り25年)
・金利:1.4%(全期間固定金利)
・ボーナス払い:なし
これらの条件で、返済期間短縮型と返済額軽減型それぞれの軽減効果をシミュレーションすると、以下の通りになります。
ローン実行から5年後 | ローン実行から10年後 | ローン実行から20年後 | |
返済期間短縮型の利息軽減額 | 50万5,957円 | 40万5,117円 | 22万3,087円 |
返済額軽減型の利息軽減額 | 22万4,571円 | 18万5,144円 | 10万8,650円 |
ご覧の通り、ローン実行から早いタイミングで繰り上げ返済を実行した方が、ともにトータルの返済額を抑える効果が大きいという結果になりました。
ローン残高が多いほど、その分の利息支払額も多くなります。早い段階で繰り上げ返済を実行し、ローン残高を減らすことで利息支払額も抑えられ、トータルの返済額を減らせるのです。
※シミュレーション参考:金融広報中央委員会「繰り上げ返済シミュレーション」にて算出
https://www.shiruporuto.jp/public/aboutus/container/sikin/menu/s_kuriage.html
繰り上げ返済をすると住宅ローン控除に影響がある?
ローン実行から早いタイミングで繰り上げ返済を行うことにより、トータルの返済額を抑えられることがわかりました。
その一方で、早い段階で繰り上げ返済をすると、「住宅ローン控除による節税効果が小さくなる」という点も認識しておく必要があるでしょう。
住宅ローン控除は、年末のローン残高の1%を所得税などから控除できるという仕組みですから、繰り上げ返済をするとローン残高が減ってしまい、控除額も減ることになります。
住宅ローン控除は、ローン実行から10年(2022年12月末までに入居する場合は13年に延長)続きますから、「住宅ローン控除が終わってから繰り上げ返済をした方が得」と考える方もいらっしゃるようです。
ただし、住宅ローン控除はローン残高や金利、納税額などによって、効果は人それぞれ。得になるか損になるかは、一概にはいえません。
たとえば、住宅ローンの残高が多い人であれば、少額の繰り上げ返済を実行したところで住宅ローン控除の額にはあまり影響しないでしょう。
また、金利が高い時期なら、1%の住宅ローン控除を得るより繰り上げ返済をした方が、トータルでは得になることもあります。
しかし、ローン残高がそれほど多くない人や低金利が続く現状では、住宅ローン控除による節税効果のほうが大きいこともあります。
いずれにしても、どちらが得になるかは個々にシミュレーションしなければわかりません。詳しく知りたい方は、金融機関の担当者やファイナンシャルプランナーなどに相談してみることをおすすめします。
繰り上げ返済の注意点
住宅ローン控除のほかにも、繰り上げ返済を利用する前に確認しておきたいポイントがいくつかあります。
場合によっては、繰り上げ返済をすることで不利益になる可能性もありますから、これから紹介する点はしっかりおさえておきましょう。
たとえば、手数料。繰り上げ返済の実行にかかる手数料は、多くの金融機関では無料です。
ただし、一部の金融機関では1回あたり数千円から数万円の手数料を求められるところもあります。
手数料の高い金融機関を選ぶと、繰り上げ返済による利息軽減額より手数料の方が多くなることもありますから、こまめに利用する予定の方は手数料のかからない金融機関を選ぶようにしましょう。
また、一度に返済できる金額も金融機関や商品によって異なります。
多くの銀行では繰り上げ返済の額に下限を設けていませんが、ネットバンクなどでは最低10万円から、住宅金融支援機構が提供するフラット35だと100万円以上からといった最低条件額を設定しているところもあります。
こまめに利用する予定の方は、一度に返済できる最低条件額もチェックしておきたいところです。
まとめ
繰り上げ返済は、家計に余裕があるときに実行するものです。
利息額の支払いを抑えたいからと無理に実行したことで、手元資金が少なくなって生活が苦しくなるようでは、元も子もありません。
あくまでも、将来の家計にゆとりを与えることが繰り上げ返済の目的ですから、家計の状況を見定めつつ、長い目線で計画的に実行していくことが、繰り上げ返済の賢い利用法といえるでしょう。